はじめに
欧州におけるVAT(付加価値税)やTVA(仏語での呼称)は、現地企業だけの問題ではなく、日本企業が欧州市場に参入する際にも必ず直面する制度です。
特に、越境EC、展示会販売、現地法人設立など、形態に関わらずVAT/TVAは避けて通れない要素です。
本記事では、日本企業が欧州ビジネスに取り組む際に理解しておくべきVAT/TVAの基本と実務上の注意点について解説します。
VAT・TVAとは
VAT(Value Added Tax)は、EU加盟国を中心とした多くの国で導入されている間接税です。
商品・サービスの販売時点で付加価値に課税され、最終消費者が負担する税です。
フランスではTVA(Taxe sur la Valeur Ajoutée)と呼ばれ、他国でも名称が若干異なりますが、基本的な仕組みは共通です。
事業者は、販売時にVATを加算して請求し、仕入時に支払ったVATとの差額を納税します。これは「仮払VAT」「仮受VAT」として管理され、差額がマイナスの場合は還付を受けることも可能です。
DRR(デジタル報告要件)について
VAT/TVAに関連して、近年注目されているのが「DRR(Digital Reporting Requirements:デジタル報告要件)」です。
これは、取引データを電子的に税務当局へ報告する仕組みで、欧州各国で導入が進んでいます。
特にViDA(VAT in the Digital Age)構想の一環として、域内取引だけでなく国内取引についても、ほぼリアルタイムでの報告が求められるようになる見込みです。
DRRの導入により、企業は請求書の発行や受領のたびに、取引内容(取引先、金額、VAT額など)を電子的に申告する必要があります。これにより、脱税防止やVAT徴収の効率化が図られますが、同時に事務負担も増大します。
日本企業が欧州で活動する場合も、現地法人や登録VAT番号を通じてDRR対応が必須となる可能性が高く、システム面での準備が不可欠です。
国外取引は非課税対応
VAT/TVAに関して多くの日本企業が混乱しがちな点は、「国外取引の非課税」です。
日本と欧州間の取引において、欧州側の企業が日本に対して発行する請求書にはVATが課されないことが多く、これは国際取引がVAT課税対象外(exempt)であるためです。
例えば、OpenAIやZoomなどの海外サービスを利用している場合、請求書の消費税欄が0%になっていることに気づくはずです。これはデジタルサービスに限らず、物販やECでの越境販売も同様です。
ECサイトの注意点
日本企業が欧州向けにECサイトを運営する場合、VATの設計は極めて重要です。
例えば、フランス国内の消費者向けにはTVAを加算し、国外消費者には非課税とする必要があります。そのため、サイトの設計では配送先に応じてVATを正しく計算・表示できるシステムを導入することが求められます。
しかし、多言語対応のテンプレートや外部サービスを利用した場合、VATの表記が正しく反映されないケースが散見されます。
特に、すべての価格が税込表示になっていた場合、購入後に顧客から「VATが二重課税されている」とのクレームが寄せられ、返金対応が発生するリスクもあります。
また、返金額に対する送金手数料が高額になることもあり、事前の確認と設定が極めて重要です。
現地での展示会、ポップアップでの商品販売
欧州で展示会やポップアップストアを通じて商品を販売する場合、TVAを加算して販売する義務があります。
これは一時的な出展であっても、欧州現地で商品を直接販売する限りはVAT登録と納税義務が生じる可能性が高いです。
このため、以下のような手順を踏む必要があります。
現地税務当局へのVAT登録
販売価格へのTVA加算と請求書記載
四半期または年次でのVAT申告・納付
現地の税務代理人や会計事務所との連携
短期間のイベントでも、事前準備なしに現地販売を行うと違法販売とみなされ、罰則の対象になる場合があります。
展示会、ポップアップでTVAを申請しなかった場合
TVA申請をせずに現地で販売を行った場合、税務当局から追徴課税や罰金が課せられるリスクがあります。
また、現地パートナーや主催者にも迷惑がかかり、今後の出展に悪影響を及ぼす恐れもあります。
合法的な手続きを怠った結果、企業の信頼性が損なわれる可能性もあるため、必ず事前に税務処理を行っておくべきです。
合法的に申請して還付の恩恵を
VAT/TVAは負担するだけの制度ではありません。合法的に登録・申告を行えば、経費として支払ったVATの還付を受けることも可能です。
例えば、以下のような経費は還付対象となり得ます。
輸送費、通関手数料
展示会出展費用
現地の代理人費用
レンタカーや商用送迎
ただし、以下の経費は原則として還付対象外です。
飲食費
宿泊費
接待費
- 公共交通機関費
還付を受けるには、現地のVAT番号保有、領収書や請求書の原本保存、期限内の申請などが必要です。
日本企業が注意すべきVAT/TVAの基本原則
欧州で商品やサービスを提供する場合、VAT登録が必要なケースがある。
EC販売では配送先ごとにVAT対応が必要。
展示会などの一時的販売でもVAT課税が生じる。
還付申請には正確な経費管理と現地窓口のサポートが不可欠。
DRR導入に備えて取引データを電子的に管理できる体制を構築する。
まとめ
VAT/TVAは単なる消費税ではなく、正しい理解と運用により、不要な課税や返金対応を避け、ビジネスをスムーズに進める鍵となります。日本企業が欧州市場に展開する際は、VAT対応を戦略の一部として捉え、現地の税務事情に即した体制を整えることが求められます。
今後、欧州のデジタル報告要件(DRR)なども導入が進む中、VATへの対応はより厳格化していくと予想されます。
初動のミスが後々の損失にならないよう、信頼できるパートナーと共に計画的な対応を進めましょう。