EU150ユーロルール変更|関税・EPA・小口貨物税・二重課税の実務対策

EU輸出で損していませんか?関税・EPA・課税の落とし穴

フランス小口貨物税の概要

EUではこれまで、輸入価格が150ユーロ以下の貨物については関税が免除される制度(150ユーロルール)が適用されており、多くの越境EC事業者がこの前提で販売を行ってきました。

一方でフランスでは、2026年3月1日より「小口貨物税」が導入され、EU域外から輸入される150ユーロ未満の貨物に対して、1SKUごとに2ユーロが課税される仕組みが開始されています。

この税は関税やVATとは別に課されるため、
・関税(またはEPA適用で0%)
・VAT(付加価値税)
・小口貨物税(1SKUあたり2ユーロ)

という複数の課税が同時に発生する構造となります。

これにより、「150ユーロ以下ならコストは低い」という従来の前提は崩れており、EU輸出においては関税・EPA・VATに加え、国別制度も含めた全体的な課税設計が不可欠となっています。

日本企業がつまずくポイント
(EPA未適用・二重課税・制度誤解)

EU輸出において、多くの日本企業が共通してつまずくポイントがあります。
特に近年は、小口貨物税の導入により課税構造が複雑化し、誤った運用によるコスト増加が顕在化しています。

① EPAを適用していない
日本と欧州間はEPA協定により多くの製品は関税0%が可能ですが、原産地証明や書類対応が不十分なため、関税をそのまま支払っているケースが多く見られます。

② 二重課税が発生している
関税・VAT・小口貨物税の関係を正しく理解しておらず、輸出側と輸入側で課税が重複しているケースがあります。
特にIOSS未対応やインボイス記載不備が原因となることが多いです。

③ 150ユーロルールの誤解
「150ユーロ以下ならコストがかからない」という旧来の認識のまま運用している企業が多く、小口貨物税の影響を見落としています。

④ SKU単位課税の影響を理解していない
フランスでは1SKUごとに課税されるため、同一梱包内の商品点数が増えるほどコストが増加しますが、この構造を考慮せずに価格設計しているケースが多く見られます。

⑤ 輸送スキームごとの課税・責任の違いを理解していない
フォワーダーを使った輸出、EMSなどの国際郵便、発送代行会社(現地在庫)を利用するケースで、課税タイミング・納税主体・書類要件が異なります。
これを理解せずに運用すると、EPA未適用やVAT処理ミス、結果として二重課税が発生します。

これらの問題により、本来不要なコストを負担している企業が多く、EU輸出における利益圧迫の要因となっています。

関税・EPAの基本
(適用条件・原産地証明)

EUに輸出する際、通常は関税が発生しますが、2019年からEPA(経済連携協定)を適用することで、多くの製品は関税0%にすることが可能です。

ただし、自動的に適用されるものではなく、一定の条件と手続きが必要です。

① 原産地規則の確認
製品が「日本原産」と認められる必要があります。
単なる日本出荷ではなく、材料や製造工程が規則を満たしているかが重要です。

② 原産地証明の作成(自己申告)
EPAでは、輸出者がインボイス等に原産地申告文を記載する「自己証明方式」が採用されています。
書式や記載内容に不備があると適用されません。

③ REX登録(必要な場合)
一定金額を超える輸出では、REX(登録輸出者)番号の取得が必要になります。

④ インボイス・通関データの整合性
原産地申告とインボイス、通関情報が一致していない場合、EPAは適用されず関税が課されます。

⑤ EORI番号の整理(通関主体の明確化)
EUで通関を行うためには、輸入者(Importer)がEORI番号を保有している必要があります。
誰が輸入者になるかによって必要な対応が変わります。

・現地の取引先が輸入者:先方のEORIを使用
・自社が輸入者(DDPなど):自社でEORI取得が必要
・発送代行・3PL利用:契約上の輸入者に依存

EORIが適切に設定されていない場合、EPAが適用されず関税が課されるケースもあるため、事前の整理が重要です。

これらを正しく対応することで、本来不要な関税コストを削減することができますが、実務上は書類不備や理解不足により、EPAが適用されていないケースが多く見られます。

二重課税が発生する構造
(関税+VAT+小口税)

EU輸出では、制度理解や設定ミスにより、不要な課税が発生するケースが多く見られます。

① EPA未適用による関税発生
本来0%にできる関税を支払っている

② IOSS未対応によるVAT二重徴収
販売時+受取時でVATが二重発生

③ 課税主体の誤り
輸入者設定ミスにより、重複課税

④ 小口貨物税の未考慮
SKU単位課税を無視し利益圧迫

これらのミスにより、本来不要なコストが発生します。

フランス輸出の課税全体像
(関税・VAT・IOSS・小口貨物税)

フランス向け輸出では、複数の課税を正しく整理する必要があります。

・関税: EPA適用で0%可能
・VAT:必ず発生(IOSSで事前処理可能)
・小口貨物税:150ユーロ未満、1SKUごとに2ユーロ
・課税主体:誰が輸入者かで変わる

これらを一体で設計することが重要です。

正しい対応フロー
(EPA適用・課税最適化)

EU輸出では、関税・VAT・小口貨物税を個別に対応するのではなく、全体設計として整理することが重要です。
以下の流れで対応することで、不要なコストを防ぐことができます。

① 輸送スキームと輸入者の決定
フォワーダー、EMS、発送代行(現地在庫)などの輸送方法を整理し、「誰が輸入者(Importer)になるか」を明確にします。

② EORI番号の整理
輸入者に該当する事業者がEORI番号を保有しているか確認し、通関主体を確定させます。

③ EPA適用可否の確認
製品ごとに原産地規則を確認し、関税0%が適用可能かを判断します。

④ 原産地証明の作成
インボイスへの原産地申告文記載、必要に応じてREX登録を行い、EPA適用の条件を満たします。

⑤ VAT・IOSSの設計
150ユーロ以下のBtoC取引についてはIOSS利用の有無を決定し、VAT徴収・申告フローを整理します。

⑥ 小口貨物税の影響を考慮
フランス向けの場合、1SKUごとに2ユーロの課税が発生するため、SKU構成・価格設計・梱包方法を見直します。

⑦ 書類・通関データの整合性確認
インボイス、通関データ、IOSS番号、原産地申告の内容が一致しているかを確認します。

このフローを事前に整理することで、関税の過払い、VATの二重課税、小口貨物税による想定外コストを防ぐことができます。

Swapsssが支援できること
(関税・EPA・輸出入・実務対応)

EU輸出における関税・EPA・課税対応は、制度理解だけでなく、実務設計と運用まで含めた対応が必要です。
Swapsssでは、以下を一体で支援しています。

① 課税構造の整理・最適化
関税・VAT・IOSS・小口貨物税を含めた全体設計を行い、不要なコストを排除します。

② EPA適用支援
原産地規則の確認、原産地申告文の作成、REX対応など、関税0%適用の実務をサポートします。

③ 輸送・通関スキーム設計
フォワーダー、EMS、発送代行(現地在庫)を踏まえ、最適な輸入者設定と通関フローを構築します。

④ EORI・IOSS対応
EORI取得の整理、IOSS導入・運用設計を行い、通関・VAT処理の最適化を実現します。

⑤ 書類作成・チェック
インボイス、原産地申告、通関データに加え、適合証明書、残留薬ゼロ証明書、第三者機関の検証結果を加味した各種証明書の作成・確認を行います。

⑥ 越境EC対応(法規・オペレーション)
越境ECに必要な特定条件整理、販売条件設計、課税対応を含めたオペレーション構築を支援します。

⑦ 運用フロー構築・継続支援
単発対応ではなく、実務として回る仕組み(社内フロー・チェック体制)を構築します。

EU輸出は「制度理解」ではなく「実務設計」が成果を左右します。Swapsssでは、現地視点での実行支援まで対応しています。

対応しない場合のリスク
(利益圧迫・販売停止)

EU輸出において、関税・EPA・VAT・小口貨物税への対応を行わない場合、直接的なコスト増加だけでなく、販売継続にも影響が出るリスクがあります。

① 利益の大幅圧迫
EPA未適用による関税負担、VATの二重課税、小口貨物税の見落としにより、本来不要なコストが発生し、利益率が大きく低下します。

② 価格競争力の低下
不要なコストを価格に転嫁せざるを得ず、現地競合と比較して価格が高くなり、販売機会を失う可能性があります。

③ 通関トラブル・配送遅延
EORI未整備、IOSS未対応、書類不備により通関が止まり、配送遅延や追加請求が発生します。

④ 受取拒否・返品増加
購入者側で予期しないVATや追加費用が発生すると、受取拒否や返品につながり、物流コストが増加します。

⑤ 販売停止・取引停止リスク
規制未対応や繰り返しの通関トラブルにより、プラットフォームや取引先から販売停止・契約解除となる可能性があります。

これらのリスクはすべて「事前設計」で回避可能です。EU輸出では、制度対応を後回しにせず、最初に整理することが重要です。

まとめ

フランスを含むEU向け輸出では、関税・EPA・VAT・小口貨物税が組み合わさる複雑な課税構造を正しく理解し、事前に設計することが不可欠です。

特に、
・EPA未適用による関税負担
・IOSS未対応によるVATの二重課税
・小口貨物税(1SKUあたり2ユーロ)の見落とし

といったミスにより、多くの企業が不要なコストを負担しています。

また、輸送スキームや輸入者の設定(EORI)によって課税主体が変わるため、実務設計を誤ると通関トラブルや販売停止につながるリスクもあります。

EU輸出は「制度を知る」だけでは不十分であり、「関税・EPA・VAT・小口貨物税を一体で設計すること」が重要です。

Swapsssでは、これらを踏まえた実務設計から運用まで一貫して支援しています。
EU輸出における課税やコスト構造に課題を感じている場合は、早期の見直しをおすすめします。

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