はじめに
「RoHS指令」という言葉を聞いたことはあっても、どこまで関係があるのか、いまいちピンとこない方も多いのではないでしょうか。
実際、「環境関連のルールでしょ?」という程度の理解で止まっている企業も少なくありません。
しかし、EUで製品にCEマークを表示するためには、RoHS指令への適合が必須です。
CEマークを付けるということは、「EUが定めるすべての関連法令に適合している」ことを意味します。その中に、電気・電子機器における有害物質の使用を制限するRoHS指令(Directive 2011/65/EU)が含まれています。
つまり、「RoHS対応なしにCEマークは取得できない」ということです。
この記事では、RoHS指令の基本から、対象製品、責務の所在、そして実務上の対応手順までをわかりやすく解説します。
RoHS指令とは
RoHS(Restriction of Hazardous Substances)指令は、EUが定めた「電気・電子機器に含まれる特定有害物質の使用を制限する法令」です。
正式名称は Directive 2011/65/EU で、一般的に「RoHS 2」と呼ばれています。
目的は明確で、廃棄時に有害物質が環境や人体に悪影響を及ぼすことを防ぐこと。
製品中に含まれる特定物質(現在10物質)が、EUで定められた上限値を超えないように管理する必要があります。
この制限を満たすことで、製品は「RoHS適合」となり、CEマーク表示の要件をクリアできます。
また、RoHS指令の対象物質や閾値は定期的に見直されるため、最新の規制内容を把握することが重要です。
RoHS指令の対象商品
RoHS指令の対象は、電気・電子機器です。
具体的には、電流または電磁場を利用して少なくとも1つの機能を果たす製品を指します。
対象例は以下の通りです。
家電製品(冷蔵庫、洗濯機、掃除機など)
IT機器(PC、プリンター、スマートフォン)
照明器具(LED、蛍光灯)
電動工具(ドリル、溶接機など)
玩具・娯楽機器(電子玩具、ゲーム機)
医療機器、監視・制御装置など
一方で、以下のような製品は対象外です。
自動車(ELV指令で別途規制)
大型産業設備
軍事・宇宙用途の機器
一部医療・監視用機器(特例あり)
また、電池自体はRoHSではなく「電池指令」の対象です。
ただし、電池を内蔵した製品は「製品全体」としてRoHSも適用されます。
RoHS指令の重要性
RoHS指令が重要とされる理由は、単に環境配慮だけではありません。
CEマーク表示を可能にする“法的前提条件” だからです。
EUで販売する際、誰がRoHS適合の責務を負うのかは販売形態によって異なります。以下に整理します。
特に注意すべきは、当局が市場監視を行う場合です。
このとき、欧州ディストリビューターが「輸入者」として責任を問われるケースが多く、メーカーに適合証明やCE関連書類を要求します。
そのため、欧州側の販売パートナーは取扱前に「CEマーク」「RoHS試験報告書」「適合宣言書(DoC)」の提出を強く求めてくるのです。
逆に言えば、RoHS対応が不十分な製品は、ディストリビューターが取扱を拒否する可能性が高く、商談そのものに影響します。
したがって、欧州市場を目指す日本メーカーにとって、RoHSは単なる法令遵守ではなく、取引開始の最低条件 と言えます。
| 販売形態 | 責務を負う者 | 主な義務 |
|---|---|---|
| EU内に支社を持つメーカー | EU現地法人(製造者) | 試験、技術文書、適合宣言書の作成、CE表示 |
| EU現地ディストリビューター経由 | ディストリビューターまたは輸入者 | メーカーがRoHS適合を果たしていることを確認。書類要求に対応。 |
| 日本からの越境EC・D2C販売 | 日本のメーカー | 自らが輸入者扱いとなり、RoHS・CE両方の義務を負う |
特に注意すべきは、当局が市場監視を行う場合です。
このとき、欧州ディストリビューターが「輸入者」として責任を問われるケースが多く、メーカーに適合証明やCE関連書類を要求します。
そのため、欧州側の販売パートナーは取扱前に「CEマーク」「RoHS試験報告書」「適合宣言書(DoC)」の提出を強く求めてくるのです。
逆に言えば、RoHS対応が不十分な製品は、ディストリビューターが取扱を拒否する可能性が高く、商談そのものに影響します。
したがって、欧州市場を目指す日本メーカーにとって、RoHSは単なる法令遵守ではなく、取引開始の最低条件 と言えます。
まとめ
CEマークを取得するうえで、RoHS指令は避けて通れない必須条件です。
EUでは環境配慮と消費者安全を両立させる仕組みとして、RoHSがCEマークの一部に組み込まれています。
申請や登録こそ不要ですが、試験データや証明書がなければ、
販売停止やリコール、パートナーからの取扱拒否につながる可能性があります。
これから欧州市場に進出する企業は、「CEマーク=RoHS適合が前提」であることを明確に理解し、
販売前の段階でサプライヤー管理、試験、書類整備を完了させることが重要です。
RoHSは「出さなくてもいい書類」ではなく、「いつでも出せるようにしておく義務」です。
この意識が、欧州市場での信頼構築と長期的なビジネス成功につながります。