
はじめに
世界には多種多様な市場が存在しますが、その中でも「新商品」の捉え方に大きな違いがあるのが、日本とフランス(そして欧州市場)です。日本では、新商品の開発とリリースが企業活動の中核となっている一方、フランス市場ではそのサイクルが極めてゆっくりとしています。
こうした違いは、単なる文化の差異にとどまらず、メーカー様のビジネスモデルやマーケティング戦略に大きな影響を与えます。本記事では、日本とフランス市場における新商品に対する消費者動向の違いを解説し、フランス・欧州進出を検討するメーカー様にとってのメリットや留意点を詳しくご紹介します。
例えば
日本では、パン屋に行くと毎月新商品が並び、限定フレーバーや季節に合わせたプロモーションが頻繁に展開されます。これは消費者が「新しさ」に敏感であり、常に変化を求めている証拠です。多くの企業が、消費者のニーズを先読みしながら、新商品を次々と市場に投入しています。
一方で、フランスでは状況が異なります。
たとえば、パリのとある老舗パン屋では、10年以上通っても商品ラインナップがほとんど変わらないということも珍しくありません。定番商品が長年愛され続け、消費者もそれを支持しているのです。
この傾向はパン屋に限らず、スーパーマーケットやコスメショップ、日用品売場などにも共通しています。新商品を頻繁に入れ替えるのではなく、「信頼できる定番」を重視する消費者の存在が、企業の製品開発戦略に大きな影響を与えているのです。
結論
このようなフランス市場の特徴は、メーカーにとって大きなチャンスでもあります。
新商品を毎月投入し、広告費をかけ、流行のサイクルに合わせて在庫を調整する必要がないため、商品開発にかかる先行投資を抑えることができます。
つまり、商品そのものの完成度が高ければ、フランス市場では「長く売れ続ける」可能性が高くなります。これは、安定的なビジネスモデルを構築するうえで、非常にありがたい要素といえるでしょう。コスト効率の良い商品展開が可能であるため、特に中小メーカー様にとっては魅力的な市場と言えます。
フランス、欧州市場では『新商品』に対して保守的であり、良しとしない文化があります!
フランス、欧州進出のハードル
しかしながら、欧州進出には、時差・文化・商習慣・規制・言語など、様々な参入障壁があるのも事実です。そのため、アジアやアメリカ市場に比べて敬遠されがちな傾向もあります。
ですが、これは固定観念に過ぎません。実際には、欧州市場の購買力とブランド志向の強さは、他地域に比べても非常に高いレベルにあり、しっかりとリサーチし、現地パートナーと協力すれば、長期的に安定した売上が見込める市場です。
また、フランス市場の特徴として、一度消費者に気に入られると、その商品が長年売れ続ける傾向が強いという点があります。「新商品」文化がそれほど強くないからこそ、一度受け入れられた商品には強い継続力があるのです。
フランス、欧州進出のハードルを経て
特にパリでの販売実績がつくと、ブランド力が一気に高まります。なぜなら、パリはファッション、食、文化、アートなど、多くの分野で世界的な影響力を持つ都市であるからです。
パリでの販売実績は、単なる数字以上の価値を持ちます。それは、「この商品はパリで売れている」という一種のステータスシンボルになり、その後のアジアや中東市場への展開にも強い影響を与えます。結果的に、価格競争に巻き込まれることなく、ブランド価値を保ったまま販路を広げることが可能になるのです。
アジア・中東の富裕層は、欧州ブランドに憧れる傾向
アジアや中東の富裕層の購買動向を見ると、欧州ブランドへの強い憧れが感じられます。
ワインであればフランス産、時計はスイス製、ファッションはルイ・ヴィトン、シャネル、ディオール、エルメスといったフランスブランドが圧倒的に支持されています。車はドイツのメルセデス・ベンツやBMW、芸術分野ではクラシック音楽やバレエへの関心も根強く存在しています。
このように、欧州ブランドに対する信頼と憧れが根強くあるため、アジア・中東への進出を見据えるメーカー様こそ、まずはフランス・欧州での販売実績を築くことが、ブランド価値を高める最短ルートであると言えます。
欧州展開は「長く売れる新商品」のための第一歩
フランス市場では、変わらないことが信頼につながる文化があります。つまり、商品を常に「新しくし続ける必要」がないということは、「一度売れたら長く売れる商品」を目指すうえで理想的な環境なのです。
企業としても、マーケティング費用や製造コストを抑えながら、安定した売上を確保できるビジネスモデルを構築できます。これは、ただ単に「新しい商品を作る」ことを目的とせず、「本当に良い商品を長く届ける」欧州的な価値観にマッチしたアプローチでもあります。
まとめ
フランス・欧州市場では、「新商品」が必ずしも短命ではなく、むしろ一度市場に受け入れられると長期間にわたって安定した売上が期待できます。これは、日本市場とは異なる大きな特徴であり、メーカー様にとっては先行投資の負担を軽減しながら、堅実なビジネスを展開できるチャンスでもあります。
加えて、パリでの販売実績は、その後のアジア・中東展開においても強力な武器となり、ブランド価値の向上に大きく貢献します。今後のグローバル展開を考えるうえで、フランス市場への進出は非常に魅力的な選択肢のひとつです。