
はじめに
弊社では、数多くの商品開発プロジェクトに関与しました。
とくに近年は、商品そのものだけでなく、パッケージデザイン、価格設定、販路戦略、そして欧州各国の規制対応を視野に入れた“グローバル設計”の重要性が高まっています。
韓国や中国の企業、そして欧州自体のメーカー(とくにフランス、ドイツ、イタリアなど)は、当初から海外市場を見据えて商品企画を立ち上げるケースが多く、結果的にスムーズな海外展開を実現しています。
それに対し、日本発の商品は、国内市場を起点とした企画が多く、海外展開時に規格変更やラベル再印刷など、コストと時間がかかる“後戻り”が多発しています。本稿では、特に欧州市場を意識した商品開発の際に、初期段階から考慮すべきポイントを整理します。
パッケージに関するグローバル対応の必要性
欧州へ商品を輸出する場合、必ず確認しなければならないのが「商品本体に関する認証・宣言・規制」と「商品箱(パッケージ)に関する規制」の2点です。
この規制対応には、事前の申請、公式書類の作成、専門機関への登録や加盟、さらには試験機関での検証といった工程が商品によって必要になります。
ここで重要なのが、これらの情報をすべて商品箱に記載する必要があるという点です。
生産性やコストの面からも、印字の設計は企画初期段階から進めることが不可欠です。デザイン完成後に欧州規制に気づいた場合、箱の再設計・再印刷が必要となり、大きな負担となります。
各国に異なるリサイクルマークや規制
商品箱に対する規制は、商品ジャンルを問わず存在します。とくに環境配慮に関するマーク類(リサイクルマーク、PAPマークなど)は、食品・雑貨・玩具など幅広い商品に共通して義務付けられています。
たとえばフランスでは「Trimanマーク」の表示が必要です。これは消費者に対して「この商品は選別回収の対象です」というリサイクルフローを示すための統一記号です。
このような環境マークの印字は、輸出後に追加貼付することは推奨されず、箱への直接印刷が求められます。したがって、商品企画段階で各国のパッケージ要件を把握しておくことが、スムーズな展開に繋がります。















欧州ではプラスチック製の箱が不利に
欧州市場では、環境配慮意識が非常に高く、商品箱がプラスチックであることがマイナス評価につながる傾向があります。
弊社でも実際に、商談段階で欧州企業から「パッケージがプラスチックである限り、取り扱いは難しい」と言われたケースが複数存在します。
特に、アップサイクルやオーガニック・ナチュラルといったコンセプトの商品を展開する際、箱やラベルにも一貫した環境対応が求められます。
商品本体にどれほど優れた環境性能があっても、箱がプラスチック製では説得力が薄れます。
商品開発における“はじめからグローバル対応”の重要性
国内市場に向けて完成させた商品を、あとから海外展開仕様に変更するには、時間・コスト・手間すべてが二重にかかります。
たとえば:
- 成分表示を多言語で印刷し直す
- CEマークやTrimanマークを急ぎで箱に追加する
- 紙素材パッケージへ変更するため型を再設計する
といった作業は、すべて後追い対応の典型例です。
逆に、最初からグローバル要件(欧州規制・エコマーク・素材対応)を踏まえて設計された商品は、販路が広がり、欧州での評価も高くなります。さらには、現地ディストリビューターからの信頼やリピート発注にも繋がることが多くなります。
まとめ
商品開発の初期段階から、欧州市場・グローバル展開を見据えることは、競争力のある商品を生み出すための必須条件となりつつあります。
規制対応(認証・表示)
パッケージ設計(リサイクルマーク・紙素材)
環境配慮(脱プラスチック)
多言語表示
これらをあらかじめ組み込んだ商品は、市場投入後のトラブルを最小限に抑え、商談や展示会でも「準備が整っている企業」として高評価を得ることができます。
今後の商品開発においては、国内完結型ではなく、初めから輸出対応・規制対応を備えた商品開発が重要です。これは、日本企業がグローバル市場で持続的な成長を実現するための第一歩となります。