HACCP(ハサップ)とは

HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)とは、食品の安全性を確保するための衛生管理システムです。食品の製造・加工・流通の各工程で発生しうる危害要因を分析し、特に重要な管理ポイント(CCP)を特定し、継続的に監視・記録することで、食品の安全を科学的かつ効率的に保証します。

 

HACCP(ハサップ)の定義

HACCPは、食品の安全性を確保するための国際的な管理手法であり、以下の7原則に基づいて運用されます。

  • 危害要因の分析(HA, Hazard Analysis) – 生物的(細菌・ウイルス)、化学的(農薬・添加物)、物理的(金属片・異物)な危害要因を特定。
  • 重要管理点(CCP, Critical Control Point)の特定 – 危害を防ぐために特に管理が必要な工程を特定(例:加熱温度、冷却時間)。
  • 管理基準の設定 – CCPにおいて守るべき基準を定める(例:加熱温度は75℃以上、冷却は5℃以下)。
  • モニタリングの実施 – 基準が守られているか、継続的に監視・記録。
  • 是正措置の実施 – 異常が発生した場合、速やかに原因を特定し対策を行う。
  • 検証手順の設定 – HACCPの仕組みが正しく機能しているか定期的に評価。
  • 記録の保持と管理 – HACCPの実施状況を記録し、追跡可能な状態にしておく。

HACCP(ハサップ)と食品

HACCPは食品の安全性を確保するためのシステムであり、食品製造業者、飲食店、輸出企業にとって欠かせないものです。特に欧州向けの食品輸出では、HACCPの認証を取得していないと販売することができません。

サンプル販売、テストマーケティングでもHACCP(ハサップ)は必要?

サンプル提供やテストマーケティングの段階でも、HACCP(危害分析重要管理点)の導入は推奨されます。特に食品業界では、たとえ小規模であっても食の安全を確保することが重要です。

HACCPの導入が法的に義務付けられるかどうかは、国の規制や事業の規模によります。例えば、日本やEUでは、小規模事業者でも一定のHACCP対応が求められる場合があります。一方で、試験販売や限定的な生産では、完全なHACCP認証を取得する必要はないことが多いですが、安全管理の基本原則を取り入れることは必須です。

サンプルや試験販売の段階で食の安全対策を怠ると、商品化の際に問題が発生する可能性が高まります。不適切な衛生管理が原因でクレームやリコールが発生すれば、ブランドの信用を損ねることにもなります。

したがって、HACCPの正式な認証取得が不要であっても、リスク管理の一環として、原材料の管理、製造プロセスの衛生対策、アレルゲン管理などの基本的なHACCPの考え方を取り入れることが望ましいでしょう。

日本酒がHACCP(ハサップ)の義務対象から除外される理由

1. アルコール濃度が高く腐敗しにくい
日本酒はアルコール度数が約13~16%と高く、病原菌や微生物が繁殖しにくい環境です。特に、食中毒の原因となる細菌(サルモネラ菌、大腸菌、リステリア菌など)はアルコール濃度が高い環境では生存しにくいため、HACCPのような厳格な衛生管理が必要とされないことがあります。

2. 醸造過程での加熱処理(火入れ)
多くの日本酒は火入れと呼ばれる加熱処理を行い、酵母の活動を止めたり微生物を死滅させたりしています。この工程が食品の安全性を高めるため、HACCPのような厳格な危害分析が不要と判断されることがあります。

3. pHが低く、腐敗リスクが低い
日本酒はpHが比較的低く、酸性環境が維持されるため、細菌の繁殖が抑えられます。食品安全管理の観点から見ると、pH4.6以上の中性~アルカリ性の食品は細菌が繁殖しやすく、HACCPの適用が求められるケースが多いですが、日本酒はこの範囲外のためリスクが低いとされています。

4. 日本の食品衛生法の規制
日本では、HACCP制度が2021年から義務化されていますが、**対象は「一般食品製造業」や「飲食店業」**です。一方で、酒類は国税庁の管轄であり、食品衛生法の対象外となることが多いです。そのため、酒造業はHACCPの義務化対象に含まれません。ただし、GMP(適正製造規範)や自主的な品質管理基準は導入されています。

5. 日本酒の製造には別の管理基準がある
HACCPではなく、日本酒製造には国税庁の酒類製造業向けの衛生管理基準が適用されるため、HACCPの導入が必須ではありません。これは、酒造メーカーが独自に設定した品質管理基準や、業界団体が定めるガイドラインによって管理されることが多いためです。

HACCPとFSSC22000の違いは?

FSSC22000(Food Safety System Certification 22000)は、ISO22000を基盤とした食品安全マネジメントシステムの認証規格です。HACCPと比較すると、FSSC22000はより包括的な管理システムとなっています。

項目HACCPFSSC22000
目的食品安全リスクの特定と管理食品安全マネジメントシステムの構築と認証
範囲製造工程の重要管理点(CCP)の管理が中心HACCP+ISO22000+前提条件プログラム(PRP)の統合
認証制度認証制度ではない(管理手法)認証制度がある(第三者機関の監査が必要)
適用対象すべての食品事業者(義務化)主に食品メーカー、大規模食品関連事業者
要求事項CCPの設定と管理食品安全方針、管理手順、内部監査、継続的改善など

FSSC22000はHACCPを含むシステムですが、より厳格な要件が含まれており、特にグローバル市場での取引や大手食品メーカーのサプライチェーン管理に求められることが多いです。

HACCPとISO22000の違いは?

HACCPとISO22000の違い

項目HACCPISO22000
目的食品の安全確保(工程管理)食品安全マネジメントシステムの構築
適用範囲製造・加工工程の安全管理サプライチェーン全体(調達、製造、流通、販売)
規制各国の法規制に基づく国際規格(ISO認証制度あり)
管理方法CCP(重要管理点)を監視・管理HACCP+リスクマネジメント、内部監査など
認証単独での認証制度はなし第三者機関の認証取得が可能
対象企業食品製造・加工業者食品関連のあらゆる企業(流通、飲食店など含む)

HACCP(ハサップ)の取得方法、機関

HACCPの認証を取得するためには、以下の手順を踏みます。

  • HACCPの基本概念を学ぶ
  • 自社の食品製造工程を分析
  • HACCPプランの策定
  • 実施と監査
  • 認証機関の審査を受ける
  • 認証機関

日本国内では、

  • 公益財団法人日本適合性認定協会(JAB)
  • 一般財団法人食品安全マネジメント協会(JFSM)
  • 各自治体の食品衛生協会
    がHACCP認証を行っています。

まとめ

HACCPは食品安全管理の国際基準であり、特に欧州向けの食品輸出では不可欠な要素です。HACCPを取得しないと輸出が制限されるだけでなく、企業の信頼性にも影響を及ぼします。HACCPの導入を計画する際は、適切な知識と対策を講じることが重要です。

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