はじめに

近年、海外市場を狙う日本企業の多くが「米国」一択だった時代に変化が見え始めています。円安、地政学的リスク、関税の高さ、物価上昇など、米国進出の障壁が高くなる中で、今注目されているのが「欧州進出」です。本記事では、「欧州進出」のメリットや戦略について、関税、ターゲット国の選定、消費者法、そして実務上の言語対応に至るまで、幅広くご紹介します。

欧州進出、市場について

欧州市場は一括りにされがちですが、実際は多様な国々で構成されており、それぞれの国が異なる経済事情・文化的背景・消費者傾向を持っています。
とはいえ、「欧州連合(EU)」という統一された枠組みによって関税・法制度などの共通化が進んでおり、日本企業にとって魅力的な条件が整いつつあります。

今話題の関税について理解する

欧州進出を検討する上で最初に押さえておきたいのが「関税」の問題です。日本とEUの間には経済連携協定(EPA)が締結されており、多くの商品で関税が撤廃されています。

結論から言えば、日本と欧州間では基本的に関税が無料です。これは大きなメリットであり、アジア諸国や米国などで発生する約20%前後の関税と比較して、欧州での販売価格が単純計算で20%競争力を持つことになります。

欧州市場はTVA(付加価値税/消費税)が高いことで知られますが、物流コストや関税負担をトータルで考えた際には、コストバランスに優れており、価格競争力を維持しやすい市場と言えるのです。

欧州進出、各国を理解しターゲット国を考える

欧州進出と一言で言っても、国ごとの戦略が非常に重要になります。以下のような観点からターゲット国を選定しましょう。

1. 市場規模重視型
売上をスケールさせたい企業にとっては、フランス・ドイツといった大規模な市場は外せません。両国ともGDP、人口、消費者の購買力が高く、輸出入ビジネスでも中心的な国です。

2. 富裕層ターゲット型
単価の高い商品やブランド商材を扱う場合、モナコ、スイス、ルクセンブルクなどの高所得国が有望です。人口は少ないものの、消費単価が高く、ブランド重視の傾向が強いため、戦略次第では高い利益率が期待できます。

3. 価格重視型(製造・物流拠点向け)
東欧諸国(ポーランド、ハンガリー、ルーマニアなど)は、比較的人件費や物価が安く、製造拠点や倉庫としての利用にも適しています。また、西欧市場へのアクセスが良く、コストパフォーマンスに優れた拠点といえるでしょう。

欧州市場を理解して、効果的な欧州進出

欧州は「連合体」であるものの、消費者法、表示義務、商品ラベルなどは各国の法律に準拠する必要があります。
そのため、販売戦略には「多言語対応」が不可欠です。

当社では、パッケージデザインや翻訳に関して、英語・フランス語・ドイツ語の3言語を基本として対応することを推奨しています。

この3言語に対応する理由:
英語:国際共通語として、欧州全域への広範囲なリーチが可能。

フランス語・ドイツ語:それぞれ、フランス・ドイツという主要市場に加え、以下の富裕国もカバー可能。

フランス語圏:
スイス(ジュネーブ周辺)
モナコ
ルクセンブルク
ベルギー(ブリュッセル含む)

ドイツ語圏:
スイス(チューリッヒ周辺)
オーストリア
ルクセンブルク(一部地域)

これらを対応することで、「市場規模」と「富裕層マーケット」双方を的確にカバーできるようになります。

 

欧州進出のための次の一手とは?

ここで一つ、提案があります。

日本企業が欧州進出を行う際に最大の壁となるのが、「ローカライズ(現地化)」と「信頼の獲得」です。

そのため、以下のような初期施策が非常に重要になります。

欧州進出サポートパッケージの導入

  • 多言語パッケージデザイン

  • ラベルチェック(EU法準拠)

  • 商品カタログの現地語化

  • ローカル市場へのSNS広告出稿

  • 現地パートナー企業との提携支援

現地ユーザーの信頼を得るためには、ただ翻訳するだけではなく、現地文化に即したメッセージの発信が求められます。つまり「現地化=信頼構築」なのです。

まとめ

欧州進出は、日本企業にとって新たなブルーオーシャン市場となり得ます。関税面でのアドバンテージ、市場多様性、そして富裕層マーケットの存在など、多くの魅力があります。

特に「英語・フランス語・ドイツ語」という3言語対応を前提にした準備を進めることで、スムーズかつ効果的な展開が可能になります。今後、米国市場への依存から脱却し、安定的かつ長期的なグローバル展開を目指す企業にとって、欧州進出は非常に有望な選択肢です。

欧州への輸出に関するご相談など、お気軽にお問い合わせください。