はじめに
2025年12月に施行される EUDR(EU森林破壊規則:EU Deforestation Regulation) が、食品・ファッション・木材・自動車など多くの業界に大きな衝撃を与えています。
この新制度は、EU市場で流通する製品が「森林破壊を伴わずに生産された」ことを証明することを義務づけるものです。
対象となるのは、単なる農産物ではなく、その原料を使用した加工品や最終製品も含まれます。
つまり、たとえ日本製の商品であっても、原料がブラジル・ベトナムなどの森林破壊リスク国から調達されていれば、EUDRの規制対象となるのです。
本記事では、EUDRの概要、施行時期、対象カテゴリー、そして実際の業界別影響や対応方法をわかりやすく解説します。
EUDRとは
EUDR(Regulation (EU) 2023/1115)は、「森林破壊および森林劣化に関連する原材料・製品をEU市場に流通させない」ことを目的としたEU法です。これは、EUグリーンディール政策の一環として2023年6月に制定されました。
主なポイント
正式名称:Regulation (EU) 2023/1115
目的:森林破壊を伴う製品のEU市場流入を防ぐ
対象者:EU輸入者・販売者・輸出者
施行スケジュール:
2023年6月29日:発効
2025年12月30日:大企業に適用開始
2027年6月:中小企業にも適用拡大予定
EUが重視するポイント
原料の生産地(GPS座標)の特定
「森林破壊なし(Deforestation-free)」である証明
原産国リスク分類(高・中・低リスク)による審査レベルの調整
つまり、EUDRは国籍や製造地ではなく、
「原料がどの土地で生産されたか」に焦点を当てた新しいサプライチェーン規制です。
* 欧州における大企業の定義は以下、2つ以上該当する企業を定義します。連結ベース(子会社含む)
従業員:250名以上
- 年間売上高:4,000万ユーロ超(約68億円)
- 総資産:2,000万ユーロ超(約34億円)
EUDRの該当カテゴリー
2025年時点で、EUDRは以下の7カテゴリーを対象としています。
これらの原料およびそれを使用した製品は、EU市場への輸入時に「森林破壊なし」を証明しなければなりません。
| カテゴリー | 主な原料 | 主なリスク国 | 対象製品例 |
|---|---|---|---|
| 牛 | 牛肉、皮革 | ブラジル、コロンビア | 食肉、革靴、バッグ |
| カカオ | カカオ豆 | コートジボワール、ガーナ | チョコレート、ココア |
| コーヒー | 生豆、焙煎豆 | ベトナム、ブラジル、エチオピア | コーヒー飲料、菓子 |
| パーム油 | 精製油 | インドネシア、マレーシア | 洗剤、化粧品、食品油 |
| 大豆 | 豆、たんぱく、油 | ブラジル、アルゼンチン | 豆乳、ソース、飼料 |
| ゴム | 天然ゴム | タイ、ラオス、カンボジア | タイヤ、手袋、靴底 |
| 木材 | 丸太、合板、紙 | コンゴ民主共和国、ロシア | 家具、紙、建材 |
今後追加が検討されているカテゴリー:とうもろこし、コットン、米、ひまわり油・カノーラ油、豚・鶏肉、水産物….etc
EUDRを具体例で説明
たとえば、食品業界のケースを見てみましょう。
商社経由でベトナム産のコーヒーを原材料として日本に輸入し、日本国内で商品として製造して「日本製」としてEUに輸出する。
この場合、
たとえ製造国が日本でも、原料がベトナム(高リスク国)産のコーヒー豆であれば、EU側ではEUDRの対象になります。
輸入者は原料の農園や生産地のGPS情報を求め、「森林破壊なし」の証明ができなければ、通関が認められません。
具体的な例(業界別)
| 業界 | 原料例 | 想定リスク | EUDRでの影響 |
|---|---|---|---|
| 食品 | コーヒー、カカオ、大豆 | 高リスク国原料が多い | 原料生産地情報の提出義務 |
| ファッション | 牛革、ゴム | ブラジル・東南アジア産 | 革製品・靴が対象 |
| 木材・紙 | 合板、包装紙 | アフリカ・南米産 | FSC等の認証必須化傾向 |
| 自動車 | ゴム部品、内装材 | タイ・カンボジア産 | タイヤメーカーなどに影響 |
EUDRで間接的に影響を受ける業種
EUDRは製造業だけでなく、商社・物流・小売なども巻き込む規制です。
| 業種 | 影響内容 |
|---|---|
| 商社・貿易会社 | EU輸入者から原料証明を求められる。書類提出義務が発生。 |
| 物流・輸出代行 | 通関時にEUDR証明書類を添付する必要あり。 |
| 小売・ブランド | サプライヤー選定時にEUDR遵守が新基準となる。 |
EUDR対応における Swapsss の欧州拠点サポート体制
日本企業のEUDR対応をワンストップで支援します。
リスク判定:製品や原料がEUDR対象かを分析し、リスク国・原料を可視化。
書類整備:EU輸入者が求める原料証明(農園・GPS・認証書など)の準備を支援。
欧州現地対応:フランス拠点として、EU当局・税関・輸入者との連絡や提出代行。
通関・物流支援:EUDR対応書類を含めた輸出入・倉庫・配送の実務をワンストップで支援。
最新情報提供:EUDR・PPWR・REACHなどのEU規制改訂情報を日本語で定期配信。
Swapsssは、EUDRだけでなく、PPWR(包装廃棄物規則)やREACH(化学物質規則)など、
EU市場で不可欠な複数の環境規制を総合的にサポートしています。
まとめ
EUDRは、EU市場に輸出するすべての企業が避けて通れない新環境規制です。
特に、食品・ファッション・木材・自動車業界では、原料の出所まで遡る「トレーサビリティ」が求められます。
製造国が日本でも、原料が森林破壊リスク国由来であれば対象となるため、
今からサプライチェーンの透明化と書類整備が不可欠です。
Swapsssはフランス拠点の強みを活かし、
EUDR対応・通関・現地交渉をトータルで支援します。