はじめに

現在、インターネット上には関税に関する情報が数多く出回っています。

しかし、そうした情報の中には欧州の関税制度を正確に捉えていないものや、抽象的な表現にとどまっているものも多く、実務に活かせる知識として不十分であることもしばしばあります。

特に、「関税」と「現地課税(TVA)」を混同しているケースが目立ちます。

この記事では、トランプ関税の影響も踏まえつつ、欧州への輸出・進出に必要な関税の正しい知識、注意点、そして戦略的なポイントをわかりやすく解説します。

結論
日欧間には関税が基本的に存在しない

まず押さえるべきポイントは、2019年に発効した日EU経済連携協定(EPA)によって、日本と欧州連合(EU)との間の関税は基本的に撤廃されている、という事実です。

つまり、日本からEU加盟国へ正規の手続きを経て商品を輸出する場合、関税は原則として発生しません。

ただし、ここで注意が必要なのが、「現地課税(TVA)」の存在です。

これは輸入された商品に対して課される付加価値税(消費税)であり、受け取り側が支払う義務があります。このTVAと関税が混同されているケースが非常に多く、混乱を招いています。

欧州進出における販売戦略の注意点

欧州での販売戦略を構築するにあたり、以下の3点は特に重要です:

  1. 関税の有無

  2. 現地課税(TVA)の計算

  3. 通関遅延時の倉庫保管料などの追加費用

この3つを正しく理解していないと、想定していた損益分岐点を誤り、商談が不調に終わる、利益が出ない、または長期的な取引に発展しないといった問題が発生します。

また、現地で独占販売契約などを結んでいる場合には、価格改定が難しくなることがあります。

価格変更には現地パートナーの合意が必要な場合も多いため、契約内容をしっかり確認し、専門家への相談をおすすめします。販売規約や独占販売権の条項なども含め、初期段階での法的確認が不可欠です。

そして3について、迅速に税関への問い合わせ、理由を確認し追加書類の提出など対応する必要があります。
こちら、遅れる度に、倉庫保管料は加算され、相手企業にも迷惑をかけ、最悪の場合は、取引停止になる場合も少なくありません。

この場合、現地語での対応が不可欠で、現地のエキスパート企業の支援が必要になります。

関税・自由貿易協定の定義と誤解

前述の通り、日本と欧州間には経済連携協定(EPA)があります。しかし、これは「日本からEUへ」輸出された商品が対象です。

つまり、たとえば製造元が中国など第三国であり、直接欧州へ輸送される場合には、EPAの対象外となります。この場合は通常通り関税が発生しますので、「日本からの輸送であること」が条件である点に注意してください。

製造・輸送ルートによって関税の有無が大きく変わるため、物流計画は慎重に行う必要があります。

現地課税(TVA)とは?

欧州各国にはそれぞれの付加価値税(TVA)の税率があり、これは関税とは別の税金です。以下は主な国のTVA税率です:

  • フランス:20%

  • ドイツ:19%

  • イタリア:22%

  • スペイン:21%

このTVAは、商品代金・保険料・送料を合計した金額に対して課税されます。

たとえば、商品価格が100万円、送料が5万円、保険料が1万円の場合:TVA(フランス)=(100万円 + 5万円 + 1万円)× 20% = 211,200円

B2B取引で数十万〜数百万単位の取引を行う場合、このTVA負担は決して小さくありません。

TVAは還付対象であり、実質負担なし

ただし、このTVAについては還付制度があります。

企業が現地で課税されたTVAは、月次または四半期ベースで還付申請が可能であり、最終的には実質ゼロになるケースがほとんどです。

したがって、輸入企業はTVAを「一時的に立て替える」だけで済みます。TVAの負担によって取引を避ける必要はありませんので、心配は無用です。

この還付制度を利用するためには、受け取り側が「EORI番号」を取得していることが必須です。EORI番号(Economic Operators Registration and Identification)は、EU域内で輸出入を行う企業に義務付けられている識別番号です。

もちろん、弊社もEORI番号を保有しており、スムーズな輸出入手続きが可能です。

欧州・フランス進出のメリット

アメリカのトランプ政権下で導入された追加関税政策、いわゆる「トランプ関税」の影響により、米国への輸出にコストがかさむようになった企業も少なくありません。

さらに、東南アジア諸国への輸出では、各国で異なる関税・非関税障壁が存在し、貿易の複雑さがネックになることも。

一方、日欧EPAによる関税ゼロの恩恵を受けられる欧州市場は、安定的かつ長期的に魅力的な市場であると言えるでしょう。

特に、フランスなどの大消費国への進出は、ブランド構築の観点からも大きな価値があります。

まとめ

欧州での輸出ビジネスを検討する際には、「関税」と「現地課税(TVA)」を正しく区別することが極めて重要です。

  • 日本からの輸出において関税は原則ゼロ

  • 現地課税(TVA)は受け取り側の負担で、還付可能

  • EORI番号の取得は輸出入の前提条件

  • 通関トラブルや保管料への対処も含めた戦略設計が必要

こうしたポイントを押さえた上で、慎重かつ戦略的に欧州進出を進めることが、持続可能なビジネス構築への第一歩となります。

欧州への輸出に関するご相談など、お気軽にお問い合わせください。